血の道症について その2(月経不順:基本処方の温経湯)
1.月経(生理)不順とその原因
月経(生理)不順は、月経が始まった日から次の月経が始まる前日まで周期が定まらない状態のことです。
月経の周期や期間が定まらないのは、女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)バランスの乱れが原因です。
この女性ホルモンバランスの不調には、精神的なストレスによって脳からの性腺刺激ホルモンが乱れることも関係しています。
そのため月経不順を予防し治療するためには仕事や生活習慣や食習慣を見直し、適度に運動して気分転換をはかることも重要です。
2.月経(生理)不順の漢方医学の病理
漢方医療が適するのは、卵巣の機能性障害や精神的要因による月経不順です。
卵巣や子宮に検査や所見で明らかな器質的な異常がある場合には西洋医学的な治療が必要です。
月経不順の漢方医療では、先ず月経周期が早くなる(月経が頻発する)傾向か、遅くなる(稀発する)傾向かに注目し、さらに全身症状を加えて、気(キ)・血(ケツ)・水(スイ)の機能や量の失調で病理病態を診断します。
月経不順の主な病理には、
- 周期が早くなる傾向で、冷え症傾向で、疲労倦怠感、消化吸収機能の低下した状態は、気虚(キキョ)と、その結果として起こる血虚(ケッキョ)、
- 周期が遅くなる傾向で、顔色や栄養状態の悪く、皮膚が乾燥傾向で、動悸や不眠を伴う血虚(ケッキョ)、
- 周期が早くなったり遅れたり不安定で、心理社会的ストレスがたまり、気うつやいらだちなどを伴う気滞(キタイ)
3.月経(生理)不順の基本処方…温経湯(ウンケイトウ)
月経不順の主な病理として気虚と血虚と気滞を示しましたが、これらは複合して発現します。さらに、月経不順には微小循環不全に相当するオ血(オケツ)や、思春期の発育遅れや加齢による虚弱に相当する腎虚(ジンキョ)も関係します。
このような複合した病理を調整する生薬を適切に組み合わせた処方が温経湯(ウンケイトウ)です。処方名は「温めて月経を調える」という効能に由来しています。
4.温経湯(ウンケイトウ)の主な配合生薬
温経湯(ウンケイトウ)の主な配合生薬は、
- 栄養状態の不足傾向の血虚を調整する、当帰(トウキ)と芍薬(シャクヤク)
- 疲労感などバイタリティーの不足傾向の気虚を調整する人参、甘草
- 血液の循環不全のオ血(オケツ)を改善する牡丹皮(ボタンピ)、
- 全身や下腹部が冷える寒証(カンショウ)を温める、桂皮(ケイヒ)、呉茱萸(ゴシュユ)、
- 皮膚乾燥などの体液不足状態の津液不足(シンエキフソク)を潤す阿膠(アキョウ)、人参、麦門冬(バクモンドウ)
さらに本方には胃腸機能を調整する人参、甘草、半夏、生姜も配合されていますので、連用に適しています。
5.温経湯(ウンケイトウ)の適応症状
温経湯は、体力中等度以下で、手足がほてり、唇が乾く人の「月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、肌荒れ(手の湿疹・皮膚炎)」に適します。
本方は、血虚によって月経周期が遅れる人にも、気虚によって早くなる人にも適します。
婦人科領域で頻用されるのは、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)と桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)ですが、本方は、この両方の効能を合わせ持ち、冷え症と乾燥状態を改善する処方です。冷え症が主体ですが、口が乾燥する傾向にあり、手の平(掌)や足の裏が「ほてる」のが使用目標です。
上記文章の引用元:http://www.kigusuri.com/kampo-care/016-2.html