血の道症について その1(漢方医療の考え方)
1.女性の成長過程と諸症状
女性の成長に関して、漢方医学の古典『黄帝内経(コウテイダイケイ)』には、女性は14歳で月経がはじまり、女性として最も成熟した年齢は28歳で、閉経は49歳と記されています。この古典の初潮と閉経期は現代とほぼ一致しています。女性の思春期から性成熟期そして更年期の間の月経や出産・産後に関連する諸症状が「血の道症(チノミチショウ)」に相当します。2.血の道症
血の道症は「月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やイラダチなどの精神神経症状および身体症状」です。
3.血の道症:漢方医療の考え方
漢方古典の『金匱要略(キンキヨウリャク)』に婦人病の病因は「婦人之病、因虚、積冷結気」と記されています。
- 「虚(キョ)」は、体力の不足や機能の低下、
- 「積冷(シャクレイ)」は、冷え症で新陳代謝の低下した状態、
- 「結気(ケッキ)」は、ストレスが鬱積した病態です。
これらが婦人病(血の道症)の主な原因になるという意味です。
漢方医療では、この病態を「気(キ)・血(ケツ)・水(スイ)」という言葉を用いて考えます。
4.血の道症の「病理の虚証(キョショウ)」
血の道症の患者さんの虚や積冷には、
- 消化吸収能力の低下した気虚(キキョ)
- 栄養状態の良くない血虚(ケッキョ)と、
- 身体の水分が不足した津液不足(シンエキフソク)
などが関与しています。
血の道症の治療では、これらの虚証(気血水の機能や量の不足)を補う生薬が用いられます。
主な生薬は
- 胃腸機能を調え疲労感や冷え症を軽減する人参(ニンジン)
- 栄養不足を補い顔色の悪さや腹痛・月経痛を軽減する芍薬(シャクヤク)
- 身体の水分を補い乾燥した皮膚を潤す地黄(ジオウ)
5.血の道症の「病理の実証(ジツショウ)」
血の道症の患者さんの気血水の流れが停滞した実証(ジツショウ)には、
- 心理社会的ストレスの鬱積した気滞(キタイ)と、
- 末梢循環の良くないオ血(オケツ)と、
- 身体の水分が停滞した水滞(スイタイ)
などがあります。
血の道症の治療では、これらの実証(気血水の停滞)を少なくし、巡りを改善する生薬が用いられます。
主な生薬は、
- 気うつ感やイライラやのぼせ感や膨満感を軽減する柴胡(サイコ)
- 血の流れを改善して生理痛や冷えのぼせを軽減する牡丹皮(ボタンピ)
- 身体の水分の停滞を改善しむくみや頭痛を軽減する白朮(ビャクジュツ)
上記文章の引用元:http://www.kigusuri.com/kampo-care/016-1.html